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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

縁談の駈引

実は在学中から二人の間に約束があった。それは卒業したら、お祝いに待合へ行って、思い存分騒いで見ようということだった。何方から言い出したのか忘れてしまったが、余り好い心掛けでない。尤も菊太郎君が病気になったものだから、実行の運びに至らなかった。今回はその埋め合せもあった。「叶」という家を撰んだのも僕が縁起を祝ったのである。縁談だ。叶ってくれなければ困る。それから菊太郎君と僕は兎に角若旦那だ。丸尾さんは僕の店の使用人で高野君はその友人だ。遠慮があるといけない。僕はその点も考えて、斡旋に努めた。何か一緒にやると、頭の好い方がどうしても余計に気を使う。

「君、こゝは『叶』って家だね。縁談の打ち合せに『叶』とは幸先が好い」

と菊太郎君は今更大発見の積りだ。斯ういうのは長生が出来る。

話の模様によると、高野君は矢田家に大分信用がある。主人のみならず、奥さんの御用を足しているのだから、兎に角、高野君に橋渡しを頼むことになった。高野君が瀬踏みをして、直ぐ後から然るべき仲人が乗り込む。それには誰を煩わそうかという評定に移って、僕の親父が最適任者と定った。

「若旦那、宜しゅうございましょうね?」