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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

成程、一人は綺麗な人だった。二人とも僕達の存在を全然認めない。頻りに話しながら行き過ぎた。僕は序に菊太郎君の顔を見たら、目が一寸ばかり飛び出していた。

「何うだい?」

と菊太郎君は得意だった。

「申分なし」

「宜しく頼む。その代り勉強する。もう一心不乱だ」

「すべて好きに終るものは好し」

「何だい?」

「これが好い結着になって君が向上するようならば、僕は敢えて君を咎めない。しかし実際のところは感心していないんだよ」

「美人と認めないのかい?」

「そう上っ調子だから困る」

「ふうむ」

「事そのものに感心していないんだ。しかし今更仕方がない。恩に着せるんじゃないけれど、抂げて引受けてやる。その代り将来を慎むんだぜ。すべて好きに終るものは好し」

と僕はお説法の積りだった。

翌日から試験勉強が始まった。菊太郎君は約束を守った。嘗てないような努力が毎日つゞいた。矢っ張りやればやれる男だと思った。僕は差当り動機がないから、寧ろ菊太郎君に引き摺られるくらいだった。試験が始まってからはロク/\寝なかったらしい。

「こんなことは初めてだよ。家のものが驚いている」

「感心だ。よく続く」

「昨夜は四時までやった」