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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

と僕は素よりその積りだった。

番頭達が引き退ってから、

「日出男や、長々御苦労だったな、本当に」

と父親が犒ってくれた。

「どう致しまして」

「これで兎に角、教育の方は仕上った。何処へ出ても、引けは取るまい」

「いや、未だ真の目鼻がついたばかりです」

と僕は警戒した。油の件がピンと利いている。

「これがお父さんの若い時分の頃だと豪いものだけれどもね。学校さえ出れば、直ぐに銀行の支店長ぐらいになれたんだが、現今は然うは行かない」

と親父、果してこの機会をお説法に利用する気だった。

「就職難ですから、平社員でもナカ/\むずかしいんです」

「何うするね? 身の振り方は」

「別にこれって考えはありません」

「しかし遊んじゃいられまい」

「日出男や、お前の思う通りを言って御覧」

と母親が側から言葉を添えた。

「はあ」

「会社へ勤めるなり、店で働くなり、お前の自由で宜いとお父さんは仰有っていなさるんですから」

「矢っ張り家の商売をやるか?」

と父親が先ず持ち出したのは元来その方を希望しているのだった。僕としても兼ね/″\そう理解して貰ってある。

「はあ。家で働かせて戴きます」

「会社へ勤めて月給取になるのも悪くはないよ」