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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「まさか」

「高野君が言ったもの。貰ってしまうまでは余所行きの心持でいなければ危いって」

と菊太郎君は高野さんの脅かしを真に受けている。それが僕の入れ智恵だとは気がつかない。僕は斯ういう時だと思って、種々と芸当をさせてやる。暗示の利くこと実に妙だ。矢田さんは朝五時に起きて散歩をすると高野君を通して言わせたら、翌朝から五時に起きて彼方此方歩き廻っているらしい。

「朝早いと家が皆締まっているから方々の看板ばかり目につくよ」

と感想を洩らしていた。スパイがついていると思うから、善行を見せる努力をする、まるで小学生だ。スパイが朝五時から来るものか?

しかし八月に入ってからは流石に焦り始めた。

「何うしたんだろうね? 君。もう何とか音沙汰がありそうなものだけれど」

「調査中だというじゃないか?」

「しかし余り手間が取れる。もう一月たっている」

「些っと長いね」

「握り潰しにするんじゃあるまいか?」

「高野君も緩慢だな、尤も本式の仲人の資格じゃないから、催促が出来ないんだろうけれど」

「御主人が買いなら、奥さんが売りで、奥さんが買いなら、御主人が売りさ」

「両方好い時がないから困りますと来る」