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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「往ったり来たりはしませんよ」

「成程。然う言えば余り見えないな」

「場で顔を合せるだけです。別に仲違いをしたって次第でもありませんから、話もします。しかしもう一緒に歩きません」

「ふうむ?」

「誘っても断るんです」

「何処へ誘うんだい?」

「さあ」

「カフェーだろう? それはお前が悪い」

と親父はこれだから困る。極く当り前の話の中にお説法の切っかけを見つけ出す。

「兎に角、場が引けると脱兎の勢いです。僕なんか見向きもしません。乃木坂へ飛んで行ってしまいます」

「結構じゃないか? 此方は仲人だ。それでこそ世話の仕甲斐がある」

「然う言えば然うですけれど」

「この間中と違って、もうお前に用がなくなったのさ」

「現金なものです。日曜には先方から来ますから、無論寄りつきません。それだけなら宜いんですけれど、明日は来るんだからねって、前の日に念を押します。誘わない中から撃退です」

「ハッハヽヽ」

「僕はこんなに邪魔にされる積りで奔走したんじゃありません」

「狡兎死して走狗煮られ……」

「はあ?」

「高弓、いや、高鳥死して良弓蔵る。確か然うだった」

「諺ですか?」

「うむ。用がなくなれば、今まで調法したものも邪魔にされる。