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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「それですから、保証金の立て替えなんてことは一切お引受けになっちゃいけません」

「しかし場へ電話がかゝって来た時は仕方ないでしょう? 一刻を争うんですから」

「信用の問題です。初対面ってことをお忘れにならなければ、間違いありません」

「すると先ずお法度ですな?」

「へい。十軒の中、半分に整理の必要がありましょう」

「危いんですか?」

「若旦那のことですから、店の顔も利いていましょうが、一月や二月の中に手堅いお得意が十軒なんて取れる筈はありません」

「しかし皆相応立派に暮している人達ばかりですから」

「株をやる人は皆見かけは相応です。此方も商売をしたい一心ですから、これぐらいなら大丈夫だろうと思い込みますが、内容ってものはナカ/\分りませんよ。現に私なんかも用心をしながら度々食われています。皆だって経験があります。一口に何をしているなんて仰有るのは素人の観察です」

と丸尾さんは感心に始まって、忠告に終った。お客さまに間違いがあると、責任者が弁償しなければならない。僅かな月給と細い口銭を溜めた金から吐き出すのだから身に沁みる。それだから進んで新しいお客さまを取らないというのである。