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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

しかしそんな事勿れ主義で発展が望まれるだろうか? 店に活気がない筈だ。

僕は若主人として相応考えがある。商売は何処までも積極的にやりたい。手堅いのは結構だけれど、石橋を叩くばかりで渡らなければ話が始まらない。お客さまも大量生産だ。大きな網を張って、雑魚は後から棄てれば宜い。何のことやあると僕は益※(二の字点、1-2-22)手を拡げた。相場表の送り先も今まで五百軒内外だったのを二千軒に改めさせた。

「丸尾さん、又二三軒殖えましたよ」

「はゝあ」

「これは自然の大勢だから仕方ありません。しかし初対面の規則は堅く守っていますから、御安心下さい」

「何分宜しく」

「働くのは面白いです」

「へい」

「これが店員ですと他のものに遠慮もありましょうが、僕が出しゃばる分には構いません。当分黙って見ていて下さい」

「宜しゅうございます。村正の切れ味を拝見致しましょう」

「おっと。ケチをおつけになっちゃいけません。正宗ですよ。ハッハヽヽ」

と僕は笑って誤魔化した。村正は悪剣だ。此方は機先を制したのである。親父といい、丸尾さんといい、直ぐに諺や譬えを使って意見をしたがるから厄介だ。

菊太郎君は相変らずだった。