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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「…………」

「お前はこの熊に似ている。締め括りがないから、斯ういうことになる」

「何とも申訳ございません」

と僕は頭を下げたまゝだった。親父の譬えは必ずしも当っていない。熊は捕った魚を失すだけだから元々だ。僕は積極的に損をしている。

「拡張も好いが、向う見ずじゃ困るね」

「はあ」

「居候を主人と思い込むなんて、何ういう料簡だか分らない」

「実は教育家と思い込んでしまったんです」

「教育家が株に手を出すと思うのか?」

「…………」

「何のために大学まで行ったんだ?」

「つい口車に乗せられてしまったんです」

「締め括りがないからさ」

「はあ」

「北海道の鮭だ」

と親父は間違ったけれど気がつかない。無論熊の積りだ。尤も僕は笑う余裕がなかった。親父の前へ出ると胆が些っとも据っていない。

「御主人、これは半ば私の責任でございます」

と丸尾さんが平伏した。

「店の締め括りをするのは君だからね」

「はあ。実は若旦那に御注意を申上げようと思っていたんですけれど、実に御熱心にやっていらっしゃるんですから、折角のところへ水を差すのも何うかと存じまして、つい/\差控えていました」

「骨身は惜まないようだな」