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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页
何を食べて何を飲んだか覚えがない。仲人が披露の辞を述べた後、来賓代表者が新夫婦の万歳を唱えた。僕は心から和した。周囲の人達の注意をひくくらい大きな声を出して祝したのである。一同控室へ流れ込んだ時、僕はお嫁さんの妹さんの側へ行って見た。確かに紛れなかった。小柴君がやって来て、お嫁さんへ引き合せの序に、加藤さんにも紹介してくれた。
「実は僕、お目にかゝったことがあります」
「はゝあ。矢張り学校関係ですか?」
と加藤さんはもう忘れていた。一寸心細く感じた。校長さんだから昔の生徒と思ったのらしい。僕は名刺を出した。
「成程。いや、その節はどうも……」
「以来御無沙汰申上げております」
「君、知っているのかい?」
と小柴君は案外のようだった。詳しいことを話す場合でもない。菊太郎君夫婦も紹介して貰った。加藤夫人と問題の妹さんは他のお客さんとの応接に忙しかった。
帰りは菊太郎君夫婦と一緒の車だった。走り出すと間もなく、僕は明言した。
「君、直ぐハッキリ言って置く。僕はあの妹さんを貰いたい。何分宜しく」
「合点!」
「はあ?」
と運転手が振り返った。菊太郎君はそれくらい意気込んでいたのだった。