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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

幽香子さんの意志を訊いてくれ給え。もう一遍行ってくれ給え」

「何遍でも行く」

「加藤さんの一存に相違ない。幽香子さんには話さないで断ったんだろう?」

「無論然うだろう。受けつけないんだから」

「それじゃ話が未だ徹底していない。そんなことでノメ/\引き退って来る仲人があるものか? 何が犬馬の労だ?」

と僕はプリ/\した。親しい間柄だから、つい我儘が出る。

「これから相談しようってんだ。一足飛びの結論をするな」

「君はそんなことを言われて黙っていたのか?」

「先方の都合なら仕方があるまい?」

と菊太郎君も気の練れている方でない。お婿さんの候補者と仲人の候補者が睨み合っているところへ、久子夫人がお茶を持って上って来た。菊太郎君は直ぐに相好を崩した。女房の顔を見ると筋肉が弛緩する男だ。僕も女性の前では体裁を重んじる。

「君、原則が間違っていると僕は思うんだよ。株屋を正業でないように言われて、君は黙っていたのかい?」

「議論をしたって仕方がない。小柴君だって取引所論ぐらい分っている。単に加藤さんの考えを取次いだんだから」

「加藤さんの考えが間違っている。株屋を侮辱した言分じゃなかろうか?」