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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

僕はそれを小耳に挾んで覚えていたのだった。博覧強記の点はその頃から菊太郎君を圧していたのらしい。

「ふうむ。僕は夕方だよ」

と菊太郎君は唇を歪めた。

「夕方だって矢っ張り天上一日の中だから、大した違いはないだろう」

「少し違うと言うのかい?」

「うむ。真の少しだ」

「何れぐらい?」

「朝と夕方丈け違う。日の出と日の入りだ」

「それじゃ君の方が運勢が好いのかい?」

「そうさ。朝の勢い丈け」

僕は主張よりも説明の積りだったが、驚いた。菊太郎君は忽ち血相を変えて、

「何言ってやがるんでい? この末生り瓢箪め!」

と挑戦的態度に出た。

「何瓢箪だって?」

「末生りだよ。知らなければ教えてやる。君は末っ子だから、末生り瓢箪だ。お母さんの乳をいつまでも舐っていたじゃないか?」

「そんなことは余計なお世話だよ」

「僕は長男だから、初生りだ。末生りよりも運勢が好いから、君のようにヒョロ/\していない」

「これはこの間インフルエンザをやったからだ」

「僕だってやっている」

「君が移したんだ」

「そんなことがあるものか? 末生りだから弱いんだ」

「何だ? この野郎! 黙っていれば、好い気になって」

と僕は我を忘れて組みついた。