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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「君は時々何か感じるんだね」

「うむ、今度は大いに感じたんだよ。大の男が自分で自分の成績を見に行けないなんて、醜態じゃないか? 豊子さんにも極りが悪かった」

「実は僕も少し考えた。これじゃ彼奴、兄貴の言うことを聴かない筈だと思ったよ」

「それなら丁度好い。斯ういう時だよ。中学から大学へ替わるのを切っかけに勉強を始めようじゃないか?」

「しかし予科は中学も同じことだぜ」

「それじゃ又怠けるのかい?」

「兵隊は怠けない。今までと同じことさ」

「また兵隊か?」

「うむ」

「それじゃ考えても何にもならないね」

「本科になってからウンとやる。これでもやる時が来れば、ウンとやるんだから、長い目で見ていてくれ給え」

「それじゃ僕は間に合わない」

「何が?」

「何がって、君は忘れているのかい?」

「さあ」

「豊子さんがお嫁に行ってしまうよ」

と僕は思い切って胸中を発表した。

「君は今でも矢っ張り豊子を貰ってくれる気かい?」

「うむ」

「子供の時の冗談じゃなかったのかい?」

「本気だよ、僕は」

「ふうむ」

「感心していちゃ困る」

「いや、君がその積りでいてくれるなら、僕も心掛ける。しかし彼奴は我儘だぜ」

「我儘が気に入っているんだ」