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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「いや。怠けていて些っとも勉強しなくとも、落第しないんだから、頭の好いことが分っている。成績よりも実力だ。僕は宣伝を仕直す。勉強はよせ」

「何故?」

「なまじっか勉強の旗揚げをして好い成績が取れないと藪蛇になる。君も僕も本気にならないところが値打だ。侍なら刀を抜かない。抜かないから、正宗か鈍刀か分らない」

「しかし十番ぐらいにはなれる積りだ」

「一番になれないとも限らない。然ういう含蓄を見せて置けば宜いんだ。僕が巧く弁解するよ。大舟に乗った気でい給え」

「万事宜しく頼む」

と、僕は斯うなると、菊太郎君に反対することが出来ない。

それで予科は矢張り兵隊で通した。成績は初めの中素晴らしく好かった。二人とも十何番かで、中学校以来の当りだった。いつでも初めが好いものだから油断をする。それから試験毎にジリ/\と下って、中軸でガッチリ止まった。つまり二人は勉強しなくても丁度人並ということになる。勉強したら何れぐらい上まで行くか知れない。菊太郎君の主張する通り、こゝが値打だ。豊子さんもその辺を理解してくれたのか、僕に可なり好意を示していた。これなら有望だと思って、家から申込んで貰おうと決心しかけたことが幾度もあったけれど、有望ならロマンスで行こうと考え直した。