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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「大丈夫かい?」

「何が?」

「僕に恥をかゝせないってことさ」

「その積りだ」

「積りは心細いな。決心と言って貰おう」

「決心だ。僕も本気になるよ。兵隊ってものはイヨ/\となればやるんだ。大舟に乗った気でい給え」

「大舟もよして貰おう。三年前も君は然う言ったよ」

「ふうむ」

「忘れているんだから、当てにならない大舟だ」

と僕は素より機嫌が悪い。菊太郎君の入智恵に従った為め、豊子さんに逃げられかけている。自分の発心のまゝで来ていれば、今更こんな煩悶はしない。

「まあ/\、堪忍してくれ。イヨ/\となれば、僕だってやるんだ」

「兵隊も厭だよ、僕はもう」

「やる時にやる兵隊さ」

「いや、兵隊にも懲りている。イヨ/\も何もない。初めからやれば宜いんだ」

「僕だって一生に一遍ぐらい本気になるよ。兄貴といえば成績の悪いものだと思っていやがるから癪に障る」

と菊太郎君、必ずしも無神経でない。豊子さんも律子さんも揃って成績が好い。妹達に負けるのは辛いに相違ない。僕は負けても姉さん達だ。長幼の序で説明が出来るし、それにもう皆お嫁に行ってしまって、学校のことは時効にかゝっている。

「一奮発頼むよ」