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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「はゝあ。お説教ですか?」

「日出男さんは屹度好いお嫁さんをお貰いになりますわ」

「もう懲りました。下町からは貰いません」

「山の手?」

「はあ」

「お世話申上げましょうか?」

「今度は条件をつけます」

「どんな条件?」

「その折何れ改めて申上げましょう。ハッハヽヽ」

と僕達は遠慮がない。

菊太郎君に至っては、僕が死ねば追腹を切る積りだっただけに、中学校以来の責任を感じて、その当座僕の御機嫌を取った。朝、学校へ行く時、

「君、君。待ち給え」

と必ず背中を叩いてくれる。

「有難う」

「君の部屋の壁だよ。いつもついている。あれは直すといいね」

「うむ」

「左官屋が悪いんだ。僕の家のを世話しようか?」

「それにも及ばない。左官屋よりも年月の責任だ。もう古いんだもの」

「君のところと僕のところと何方が古いんだろう」

「それは僕のところだろう」

「いや、僕のところの方がボロ/\だよ」

「何方も改築の必要があるね」

「そう言いながら、毎年延しているんだから」

「火事でもなけりゃ駄目だよ」

「一思いに焼ければね」

「結局、彼方此方をチビ/\直して、このまゝ永久だろう」

と僕は神ならぬ身の数年後大震災が待ち伏せしていることに気がつかなかった。