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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「電燈をつけましょう。これじゃ暗くて、何が何だか分りやしない」
警部は呟きながら、スイッチの方へ歩き出した。
「イヤ、電燈はつけないで下さい。もうしばらく、このままで、我慢して下さい。本当の手品は、これから始まるのです。それには舞台を薄暗くしておく方が好都合なのです」
明智は恒川氏を引止めて、
「では、もう一度、席におつき下さい。これから、いよいよ小川殺しの秘密をあばいてお目にかけるのですから」
二人の見物人は、明智の為に、元の椅子へ押し戻された。
「さて、斎藤老人達は、小川の死体を発見すると、驚いて警察へ知らせました。そして、警官が来るまで、誰も死体に手を触れぬ様、窓には掛金をかけ、ドアには外から鍵をかけて、一同この部屋を立去ったのです」
いいながら明智は、その通り、さい前警部が開いた窓をしめて、掛金をかけ、ドアは、締りが出来ているのを確めた上、鍵穴の鍵を抜き取って、ポケットに入れた。
「これで、全くあの時と同じ状態です。人々は三十分程、この部屋から遠ざかっていました。その間に、全く不可能なことが起ったのです。どこにも出入口のない部屋の中で、小川の死体が消えてなくなったのです。