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ぜんのけんきゅう
善の研究
西田 幾多郎
「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页
神においては知即行、行即知であって、実在は直に神の思想でありまた意志でなければならぬ(Spinoza, Ethica, I Pr. 17 Schol. を見よ)。我々の主観的思惟および意志という如き者は種々の体系の衝突より起る不完全なる抽象的実在である。かくの如き者を以て直に神に擬することはできぬ。イリングウォルスという人は『人および神の人格』と題する書中において、人格の要素として自覚、意志の自由、および愛の三つをあげている。しかしこの三つの者を以て人格の要素となす前に、これらの作用が実地において如何なる事実を意味しおるかを明にして置かねばならぬ。自覚とは部分的意識体系が全意識の中心において統一せらるる場合に伴う現象である。自覚は反省に由って起る、而して自己の反省とはかくの如く意識の中心を求むる作用である。自己とは意識の統一作用の外にない、この統一がかわれば自己もかわる、この外に自己の本体というようの者は空名にすぎぬのである。我々が内に省みて一種特別なる自己の意識を得るように思うが、そは心理学者のいう如くこの統一に伴う感情にすぎない。かくの如き意識あってこの統一が行われるのではなく、この統一あってかくの如き意識を生ずるのである。