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ぜんのけんきゅう

善の研究

西田 幾多郎

「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页

青空文庫

第十章 実在としての神

第十章 実在としての神

これまで論じた所に由って見ると、我々が自然と名づけている所の者も、精神といっている所の者も、全く種類を異にした二種の実在ではない。つまり同一実在を見る見方の相違に由って起る区別である。自然を深く理解せば、その根柢において精神的統一を認めねばならず、また完全なる真の精神とは自然と合一した精神でなければならぬ、即ち宇宙にはただ一つの実在のみ存在するのである。而してこの唯一実在はかつていったように、一方においては無限の対立衝突であると共に、一方においては無限の統一である、一言にていえば独立自全なる無限の活動である。この無限なる活動の根本をば我々はこれを神と名づけるのである。神とは決してこの実在の外に超越せる者ではない、実在の根柢が直に神である、主観客観の区別を没し、精神と自然とを合一した者が神である。

いずれの時代でも、いずれの人民でも、神という語をもたない者はない。しかし知識の程度および要求の差異に由って種々の意義に解せられている。いわゆる宗教家の多くは神は宇宙の外に立ちて而もこの宇宙を支配する偉大なる人間の如き者と考えている。