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ぜんのけんきゅう

善の研究

西田 幾多郎

「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页

青空文庫

第四章 神と世界

氏は幼時より淋しき独居の際においてしばしばかかる事を経験したという。また文学者シモンズ J. A. Symonds の如きも、我々の通常の意識が漸々薄らぐと共にその根柢にある本来の意識が強くなり、遂には一の純粋なる絶対的抽象的自己だけが残るといっている。その外、宗教的神秘家のかかる経験を挙げれば限もないのである(James, The Varieties of Religious Experience, Lect. XVI, XVII)。或はかかる現象を以て尽く病的となすかも知らぬがその果して病的なるか否かは合理的なるか否かに由って定まってくる。余がかつて述べたように、実在は精神的であって我々の精神はその一小部分にすぎないとすれば、我々が自己の小意識を破って一大精神を感得するのは毫も怪むべき理由がない。我々の小意識の範囲を固執するのがかえって迷であるかも知れぬ。偉人には必ず右のように常人より一層深遠なる心霊的経験がなければならぬと思う。

第四章 神と世界

純粋経験の事実が唯一の実在であって神はその統一であるとすれば、神の性質および世界との関係もすべて我々の純粋経験の統一即ち意識統一の性質およびこれとその内容との関係より知ることができる。