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ぜんのけんきゅう

善の研究

西田 幾多郎

「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页

青空文庫

第三章 意志

純粋経験の立脚地より見れば、経験を比較するにはその内容を以てすべきものである。時間空間という如き者もかかる内容に基づいてこれを統一する一つの形式にすぎないのである。或はまた感覚的印象の強く明なることと、その情意と密接の関係をもつことなどがこれを個体的と思わしめる一原因でもあろうが、いわゆる思想の如きも決して情意に関係がないのではない。強く情意を動かす者が特に個体的と考えられるのは、情意は知識に比して我々の目的その者であり、発展の極致に近いからであると思う。

これを要するに思惟と経験とは同一であって、その間に相対的の差異を見ることはできるが絶対的区別はないと思う。しかし余はこれが為に思惟は単に個人的で主観的であるというのではない、前にもいったように純粋経験は個人の上に超越することができる。かくいえば甚だ異様に聞えるであろうが、経験は時間、空間、個人を知るが故に時間、空間、個人以上である、個人あって経験あるのではなく、経験あって個人あるのである。個人的経験とは経験の中において限られし経験の特殊なる一小範囲にすぎない。

第三章 意志

余は今純粋経験の立脚地より意志の性質を論じ、知と意との関係を明にしようと思う。