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ぜんのけんきゅう
善の研究
西田 幾多郎
「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页
いかに純知識の対象なる客観的世界であるといっても、この関係を免れることはできぬ。
科学的に見た世界が最も客観的であって、この中には少しも我々の情意の要素を含んでおらぬように考えている。しかし学問といっても元は我々生存競争上実地の要求より起った者である、決して全然情意の要求を離れた見方ではない。特にエルザレムなどのいうように、科学的見方の根本義である外界に種々の作用をなす力があるという考は、自分の意志より類推したものであると見做さねばならぬ(Jerusalem, Einleitung in die Philosophie, 6. Aufl. §27)。それ故に太古の万象を説明するのは凡て擬人的であった、今日の科学的説明はこれより発達したものである。
我々は主観客観の区別を根本的であると考える処から、知識の中にのみ客観的要素を含み、情意は全く我々の個人的主観的出来事であると考えている。この考は已にその根本的の仮定において誤っている。しかし仮に主客相互の作用に由って現象が生ずるものとしても、色形などいう如き知識の内容も、主観的と見れば主観的である、個人的と見れば個人的である。