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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

ワンピースの簡単服は、茨にひっかかって、たちまちベリベリと裂けてしまった。しかし今はそんなことを顧みている余裕はなかった。

雑草をかきわけかきわけ、お美代は目星をつけて置いた葛の葉の茂っている草叢のところへ近づいていった。

「オヤ、この辺のはずなんだけれど……」

そこに武夫が長くなって倒れている筈だと思ったのに、その当ては外れて、そこには何者の姿もなかった。

「間違ったのかしら……」

あたりを見廻してみたが、この辺であることに違いなかった。武夫が棒切れで叩き破ったらしい葛の葉が点々として、白い葉裏を見せてそこらに散っているのだった。

「ああ、やっぱりここだ。武夫さんのもっていた竹がある!」

お美代は雑草の中に落ちていた竹を見つけて、拾いあげた。たしかに武夫の持っていたものに違いなかった。その尖の方は、あまり強く叩いたので、ささらのように裂けていた。それからよく見ると、その竹切れの上には、なにか赤いものがついていた。指先でさわってみると、それは血であった。それは甲虫が出したものか、それとも武夫の身体から出たものであるか分らなかったけれど、甲虫が赤い血をもっているとは思われないので、多分武夫の身体から出たものだろうと思われた。