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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

不安の一夜

辻川博士の乗ったロケットは、遂にあらゆる反抗力を失ったものか、真黄色な煙を濛々と中空に曳きながら、頭部をグッと下に下げると、アレヨアレヨといううちに、矢追村の南に真黒な海水をたたえている大戸神灘の真只中に、天に冲する水煙と共に落下し、つづいて轟然たる音響と共に花火のような一大閃光を発し、その物凄い震動に驚いて寝衣のまま戸外にとびだした村民たちの目にも、暫くはその怪光が海上に探照灯のような尾を引いて東に馳けりゆくのがうつったのであった……。

怪博士辻川聖弦はどうなったであろうか。この海中に墜落したロケットと共に、水底に深く沈んだろうか。それともあの大爆発と共に四肢は裂けて空中に飛散したであろうか。その運命の果を知る者は誰もなかった。

それは暫くお預りとして、その翌日からこの矢追村に突然姿を現した奇々怪々なる幽霊事件について、筆を進めてゆかねばならない。

不安の一夜

「とうとう、辻川のやつをやっつけちまった。ざまア見ろいだ!」

と、武夫の父の河村氏は本快の微笑をもらしたが、不死身の彼も重傷を怺えてのこの奮闘に疲れ果てたのであるか、

「ああッ……」

と叫ぶなり、その場にドーンと倒れてしまった。