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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

「やはり様子が知れぬかのう」

「甲虫甲虫と譫言をいうとるがのう。お美代坊は山の方から駈け下りて来たそうじゃで、ことによると、あの魔の森へ近よったための間違いかも知れんと思うが、どんなものじゃろか」

「魔の森かい。魔の森のことなら、武坊は知らんかもしれんが、お美代の方は恐ろしいことをよく知っている筈じゃ。なぜそんなところへ武坊を連れこんだのかのう」

「さあ、それが魔がさしたというものかもしれんでなア」

「これは困ったことになった。武坊が魔の森に迷いこんでいるのだとすれば、これはちょっと救うのがむずかしいわい」

「そうじゃ。誰も生命が惜しいから、魔の森へ入ろうという者はあらせんわ。そういえばお主は昨日の真夜中、甚平が魔の森の方角で見たという怪しい一件の話を知っとるか」

「うん、あの一件か。あれなら知っとるどころか、この儂も見た一人なのじゃ」

「おお和作、お主も見た仲間なのか。どんな風なものじゃったか、話して聞かせい」

「うんにゃ、それは出来ねえだ。あとの祟りが恐ろしいわい。魔の森は、遂に魔の森じゃ。そのとき仲間同志で喋らないことに約束したのじゃ。聞かんで呉れ。その方がお主のためでもあり、また皆のためじゃ」