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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
「ラヂオ科学」1936(昭和11)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页
大隅理学士が丘を登りきったとき、
「あら、大隅先生、お待ちしていましたわ」
といって、声をかけたものがあった。
「ああ、お美代ちゃんだネ。よく来てくれたねえ。おや、その赤ちゃんはどうしたの」
「ホホホ。これはうちの赤ン坊なのよ。あたしの妹ですわ。お守りをしているようなふりをしてソッとここまで抜けて来たのですわ。そうでもしなければ、昨日の今日でしょう。誰が外へ出してくれるもんですか」
「なるほどなるほど」
生れてからまだ十月ぐらいにしかならぬ女の幼児を抱いてそこに立っていたのは、紛れもなく昨日の怪事件の女主人公お美代に違いなかった。彼女はまだ興奮から醒めきらぬらしい、血の気のない顔をしていたが、薬の効き目もあってか、すっかり元気を恢復しているのであった。
「花束のなかに隠して渡して下すったお手紙は読みましたわ。――至急武夫君のことについて御相談したし――って、どんなことなのですの。武夫さんはまだ帰って来ないでしょうか」
「さあ、全く手懸りがないんだがねえ」と学士は苦しい心情を僅かに抑えていった。「しかし武夫君はどうしても救わなければならんと思うのだ。それについて、私はお美代ちゃんにいろいろ助けて貰わねばならぬと思うが、さしあたりこれから私の尋ねることについて、知っているだけ返事をしてみて下さい」