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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
「ラヂオ科学」1936(昭和11)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页
「痛いイ……」
悲鳴をあげたのは佐々の方だった。
「ウヌ。助け……」
声が出なくなった佐々は、博士のために遂に利腕を逆にとられて、床の上にお辞儀をしたような恰好になった。ヒイヒイ云っている彼の右耳からは、赤い血がタラタラと流れている様子だ。辻川博士が犬の様に佐々の耳に噛みついたらしかった。
「怪しからぬ奴どもだ。岩蔵は何をしているんだろう」
佐々を縛りあげてしまうと、博士は頬を膨らませて、憤慨の言葉をはいた。
「ああ痛い。……あの男なら、僕がさっき楽に寝かせて置いたよ。少くとも僕の今の場合よりも、もっと丁寧に取扱ってある。それになんだ。これは……。博士、もっと綱をゆるめてくれんか」
博士はそれを聞くと、窓のところによって、外を見た。そしてチェッと舌打をした。
門脇の小屋から、岩蔵を助けだしてくるまでに十分ほどの時間が流れた。この間、大隅と佐々とは、空しい悲憤を語りあったに過ぎなかった。
義足をつけた岩蔵の姿を見たとき、二人の不安はますます深くなった。一体博士はこの男を使って何をさせようというのだろう。
ところが、この男は、佐々の足の戒めを解いて、床上に立ち上らせた。