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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

その詔勅のおもなものは、

(一)軍人に賜った五箇条の勅諭

(二)憲法に関する勅語

(三)教育勅語

この三種である。

第一に、明治十五年一月四日に発せられた「軍人に賜った勅諭」は、その目的とするところは、天皇権力中心主義の確立にあった。「万機公論に決すべし」という誓文は、これをもって、まず否定された。

この勅諭の冒頭には、「我国の軍隊は、世々天皇の統率し給ふ所にぞある。」と書いてある。これが、「統帥権独立」の基調をなすものであった。さきに述べたように、日本の歴史によれば、神武以来、代々天皇が、国の軍隊を統率したという事実はこれを見ない。古代には、大連、すなわち大将の物部氏が、もののふとして軍を統率していたと見たほうが適当であろう。古書に、物部を、もののふと読み、後世に、武士のことを「もののふ」というようになったのは、物部氏の呼び方から始まったものであると書いてある。物部氏が亡んだのちも、もちろん、天皇が軍隊を統率したという事実はない。

つづいて「世の乱れと共に、政治の大権も亦武士の手に落ち、人力を以て、挽回すべきにあらずとはいへ」と書いてある。このことは、権力の移動が、社会情勢の要求によっておこなわれ、武士は、天皇の権力を奪いとつたものでないことを、裏書きしたものと見ることができる。