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おんなきしゃのやくわり
女記者の役割
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页
犯人の小柴は恐ろしく猿智慧の廻る男と見えて、最初から嫌疑が高城君へ向くように、新聞記者の仕業らしく仕組んだ上、書類を返しに来た晩は、どんな都合で不意に人に顔を見られるかも知れないと思って、ロイド眼鏡をかけて、付け髭をしてすっかり高城君に変装して、来たのです。危いところでしたよ。私ももう少しで騙されるところでしたが、フト気が付くと高城君は恐ろしい強度の近眼なのに、この写真の曲者の眼鏡は、同じようなロイド眼鏡でも、全く度の無い、素透しの眼鏡なのです。これは誰が見ても解ります」
説明されて見れば成程と気が付きますが、あまりの意外な成行きに、園田氏はもとより、千種も、高城も、花枝も、呆然として暫らくは言葉もありません。花房一郎はそれに構わず言葉を継いで、
「小柴の顔は、ロイド眼鏡をかけて山羊髭をつけると、高城君そっくりになります。違って居るのは、小柴の眼が、少し三白眼になって居るだけで、これは写真で見ても、注意すると区別がつきます。金庫の合言葉は、書記長の小柴が一番知る機会が多いわけで、園田さんが金庫を開けられるのを始終見て居れば、恋するものの敏感さで、合言葉が令嬢のお名前になって居ることは、直ぐ気が付きます、鍵だって同じことです。