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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
丁度電話をかけ終った所へ、ヒョッコリ喜多川夏子が訪ねて来た。
「大変なことになりましたわね。ゴリラの行衛はまだ分りませんの」
彼女は挨拶もしないで、そのことを云った。
「昨夜つかまったのです。併し、京子さんの死骸をどこに隠したかは、少しも白状しないということです」
蘭堂は今朝花園家の書生から聞かされたゴリラ男逮捕の顛末を、手短に語った。
「マア、人形に京子さんの服を着せて持歩いていたんですって。変ですわね。一体何の為にそんな真似をしたのでしょう」
「それが誰にも分らないのです。ゴリラは何にも云わないのです。イヤ、不思議はそればかりではありません。ごらんなさい。今こんな招待状が舞込んだところです」
夏子は結婚式の招待状を一読して、暫く黙り込んでいたが、ハッと嬉し相な叫び声を立てた。
「大江先生、あたし何だか分りかけて来た様な気がしますわ。エエ、きっとそうだわ。辻褄が合っているわ。あたし、名探偵になれ相な気がするわ」
蘭堂はこの若く美しき未亡人の、少々頓狂な性質を知っていたので、彼女の大袈裟な言葉にも、さして驚かなかった。
「何が分ったとおっしゃるのです」
「この招待状の意味がです。