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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

電話の声

だが、一体どこで写したのだね」

「牛込区S町の古いお屋敷でございました。エエと、あれは……そうそう、思い出しました。この前の日曜日でございます。子供達の学校が休みであったのを、よく覚えて居ります」

「エ、日曜日だって?」

布引氏と鳥井青年が、殆ど同時に叫んだ。

「それは君、本当かね」

「ハア決して間違いはございません。午後になって小雨がふり出しました、あの日でございます」

確かに最近午後に小雨が降った日と云えば、日曜の外にはないのだ。

「君、冗談を云っているのじゃあるまいね。この写真の女はわしの娘なのだ。急病でなくなって、今日が八日目だ。分ったかね。ここに写っている花嫁は、先週の木曜日になくなって、土曜日に火葬にしたのだ。その死人が、火葬になった翌日の日曜日に、こんな盛装をして、お嫁入りをするということが、あり得るだろうか」

「エ、エ、何でございますって?」

今度は写真師の方がたまげてしまった。

電話の声

あり得ないことだ。死人が自動車の窓から顔を出して父を呼んだ。死人が結婚式を上げた。今の世に怪談を信ずべきであろうか。怪談でなくて、この様な奇怪事が起り得るであろうか。