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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

蠢く者

「イヤ、こんなものはどうだっていいです。それより京子さんのお身体が大切だ。早く医者を呼ばなければいけません」

蘭堂は賊の手紙をポケットに仕舞いながら云った。

蠢く者

京子の傷口が癒えて病院から自邸に帰ったのは、それから一月ばかり後であった。その間大江蘭堂は、賊の危害を慮って、恋人を見舞うことさえ慎しんでいた。

鎌倉の喜多川夏子は、京子の事件を知ると、すぐ様蘭堂を訪ねて見舞を述べた。無論彼女自身も、例の入墨の生腕一件について警察の取調べを受け、少からぬ迷惑を蒙っているのだ。

「私達は三人とも、同じ敵に悩まされているのですわね。恐怖王という奴は、なんてむごたらしい人非人でしょう。私共は力を協せてあいつを防がなければなりませんわ」

彼女はそんな風に云った。又、

「これですっかり先生の秘密が分ってしまった。京子さん、あなたの愛人なのね。ね、そうでしょう。ホホホホホ」

といやらしいことも云った。

蘭堂が賊の脅迫状のことを話すと、

「マア、それで先生は病院へお見舞にいらっしゃらないのね。そして、そんな憂欝な顔をしていらっしゃるのね。お気の毒ですわ。アア、いいことがある。