轻松读懂日语经典作品
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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
悪夢
……アラ、何も云やしませんわ。エエ、切ります、切ります。――ではお父さま、本当に……」
そこで、側にいた奴が、無理に受話器をかけたと見えて、バッタリ声が途絶えてしまった。
布引氏が直様交換局を呼出して、先方の電話の所を調べさせたのは云うまでもない。併し、その結果分ったことは、相手の非常な用心深さばかりであった。先方の電話はある場末の自動電話だったのだ。無論曲者はもう遠くに逃げ去ったに違いない。今から何と騒いで見ても追ッつかぬ。
布引氏は賊の申出でに従って、警察に届出でるのは見合せることにした。こういう場合に、賊の申出にさからって、飛んでもない結果をひき起した例を、屡々耳にしていたからだ。賊は五万円が目的なのだ。それさえ与えたら危害を加えることもなかろう。それに五万円は大金ではあるけれど、布引氏の資産に比べては物の数でもない。しかも何物にも換え難い一粒種の愛嬢の命が買えるのだ。「こんな廉い取引はない」と、太っ腹の布引氏は忽ち思案を定めたのである。
悪夢
さて、お話は鳥井純一青年に移る。
布引氏が奇怪なる電話に、亡き人の声を聞いたのと、殆ど同じ時刻に、鳥井青年は、目に見えぬ糸で引かれでもする様に、牛込区S町のかの怪しき空屋へと、近づいていた。