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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

「ハハハ……。写真屋を呼ぶまでもない。わしが断言する。娘は決してこんな男と婚礼なんかした事はない」

「でも、念のためです。若しいたずらだとしたら、そいつを見つけだして、こらしめてやらねばなりません。それにつけても、一応写真屋に問い訊す必要があると思います」

云われて見れば、如何にもその通りだ。仮令死者とは云え、娘がこの様な侮辱を受けたのを、捨てて置く訳には行かぬ。

そこで台紙に記してある写真館に電話をかけて、主人を呼び寄せることになった。

間もなく、読者には已に顔なじみの写真師が鞠躬如として大銀行家の応接間に現われた。

「この写真を撮った覚えがあるか」と差出された例の写真を一目見ると、彼は直様思い出して答えた。

「記憶しております。つい四五日前に出張撮影したものでございます。非常なお急ぎでございまして、殆ど修整抜きで焼きつけました様な次第で、エエと、お名前はたしか、荒目田さんとおっしゃいました。変ったお名前だったものですからよく記憶して居ります」

写真師は愛想よく、ペラペラと喋った。

「何だって? 四五日前だって? そんな馬鹿な、どうして写真なぞとれるものか。