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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
「京子さん、これはやっぱりあたり前の米粒だよ。だが、なぜこんなに薄黒いのだろう。君はこれをよくも検べて見なかったのだね」
「エエ、気味が悪くて……」
「この薄黒いのはね、字が書いてあるんだよ。米粒の表面に、虫眼鏡でも読めない程小さな字が、一杯書いてあるんだよ」
「マア、本当?」
「見てごらん。ホラ、ね、同じ三字の組合せが、何十となく、ビッシリと並んでいるだろう」
京子が覗いて見ると、虫眼鏡の下に、丸太ん棒の様な巨大な指が二本、その間にはさまれて、大瓜程の米粒があった。そして、その表面に、
恐怖王恐怖王恐怖王恐怖王………
とビッシリ黒い字が並んでいた。
「オヤ、恐怖王っていうと……」
京子はギョッとした様に探偵小説家の顔を見た。
「僕の友達の鳥井君に、恐ろしい情死をさせた奴です。あいつ、又こんないたずらをしたんだな。この間は布引照子さんの死骸に『恐怖王』と刻みつけて見せたかと思うと、今度はこれだ。奴め、ひょっとしたら、僕がこの事件に興味を持っているのを感づいたんじゃないかしら」
「マア、怖い! あたしどうしたらいいでしょう。あいつに見込まれたのじゃないでしょうか。