轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

切口には幾重にも白布を巻いて、出血がとめてあった。

蘭堂は倒れた夫人はそのままに、いきなりベッドの毛布をまくって見た。毛布の下には、両手を失った、無残な京子のむくろが横わっていた。呼吸も脈搏も絶え果てて。毛布に覆われていた為にそれまで少しも気附かなかったが、シーツは毒々しく血のりに染っている。

「オイ、誰か来てくれ給え」

大声にどなると、見張り番の書生が二人駈け込んで来た。そして、京子の有様を見ると、アッと叫んだまま棒立ちになってしまった。

全く不可能なことが行われたのだ。二人の書生は一瞬間も持場を去らなかった。無論夫人の外には猫の子一匹寝室へ這入ったものはない。又出たものもない。

窓の鉄格子は別状なく、床板や天井にも何等怪しむべき点はなかった。

「誰もここを出なかったとすれば、曲者はまだ部屋の中にいるのだ。君達探してくれ給え」

だが、探せと云って、この上どこを探せばよいのだ。ベッドの下は見通しだし、外には人間一人隠れる様な箇所は一つもない。書生達はあっけにとられて蘭堂の顔を見た。

蘭堂も、我と我が言葉に苦笑しながら、併しあきらめられぬと見えて、部屋の中をアチコチと歩き廻った。