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せいじがくにゅうもん
政治学入門
矢部 貞治
「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页
しかしなぜ権力の獲得と保持のために闘争するのかといえば、人民を支配する権力を自分が掌握せんがためであって、すなわち自分が対立と分化を統合し、国家の意思と秩序を創造し実現しようとするからである。政治はあくまで権力そのものでも権力闘争そのものでもなく、それらは単に政治の手段にほかならない。
政治の本質は、このように対立と分化を権力的に統合組織化して、一体的な国家の意思と秩序を創造し実現するにあるから、なんらの対立も分化も相剋も抗争もなく、初めから一体的な意思や有機的な秩序が成り立っているような完全な共同体には、政治はそもそも不必要であるのみならず不可能である。そういう社会には権力で統一する余地も必要もないからである。だからもし「神ながら言挙げせず」とか、「民自然にして治まる」とかいうような社会があったら、そういう所に政治権力が働く心要もなければ可能性もない。
「政治は政治なきを期す」という言葉があるのは、政治権力を用いないでも、おのずから一体的な意思と秩序が成り立つようになるのが、政治の理想だという意味であろうが、しかし人間の現実の社会にはそのような完全な共同体は実在せず、必ずやなんらかの対立、分化、矛盾、抗争というものが存在するので、それらを統合して、一体的な共同生活の意思と秩序を生み出すために、どうしても