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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

御内室にも、信長の軽率な行状ぶりを、それとなく案じておられた。――実は、日吉祭のわずか三日の問題だが、味方の城下では、祭や踊りに浮かれていると聞いたら、戦線の将兵はどう思おう。敵国からも末期症状と見られるだろう。何よりはまた、民心をつけ上がらせ、平常の御国策も自然に行われなくなろう。

「由々しい問題じゃ。――よろしい。三左がお諫め申しあげてみよう」

「なにぶん」

奉行や添役は、頭を下げた。

可成は、側にいる愛くるしい少年の童髪を撫でて、

「父は、殿様へお眼通りしてすぐ戻って来る。大人しゅうしていやい」

美童は、素直に頷いた。

男かしら? ……と、見惚れていた奉行は、愛想に、

「ようお聞きわけじゃの。お名は?」

と、訊ねた。

美童は、彫って丹を点じたような唇元で、

「蘭丸」

と、答えた。そして出て行く父の後ろ姿を、美麗な眸で見送っていた。

奈良人形のように、両手を膝に重ねたまま、蘭丸は、かなり長い時間、動きもせず待っていた。

やがて、可成は退って来た。

どうか? ――と案じていた人々が、すぐ君前の首尾を訊ねると、可成は先に首を振って見せた。

「お聞き入れはない――。