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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

城門が開いた。

正月のように塵一つない。幅のひろい道が城下町まで見とおしである。

貝の音につれて、燦々、粛々、秀吉につづく隊列は流れ出した。その日の秀吉の服装はいうもおろか、小姓、近習以下、列のすそに至るまで、さながら絵巻を繰るような美しさだった。

町中の往来には、犬の子も通っていない。金屏風や作り花の軒が両側に見え、家先には、家じゅうこぞって晴着をきて筵に平伏していた。そして秀吉のてかてかした顔が行列のながれにつつまれて通ると、横町や裏辻のほうで太鼓ばやしと俗謡の節だけが聞えた。

てんてこてん……

おん大将のお装束には

金糸赤地のよろい召し

よろい召しよろい召しよろい召し

銀のかぶとの

赤糸しめさせ

朝日にかがやく

海山に海山に海山に

お馬の先の

のぼりのだしには

金のひょうたん

ぴかぴかとぴかぴかとぴかぴかと

御馬のあしおと

たかく召されて

あっぱれ大将

御大将御大将御大将

いさみ進める

若武者ばらには

紫あやの母衣かけて

母衣かけて母衣かけて母衣かけて

ご威勢たのもし

村々おさまり

五穀は成就

大安心大安心大安心

平和の歌声はどよめいて、埃りも瑞気の虹に見えてくる。この俗謡は秀吉が小谷から居城を長浜にうつした時、領民がよろこびのあまりその入城の折に踊り狂ったもので、歌詞はもとより俚翁か文字のない市人の作で拙いが、領民の真情は、おのずからその張り