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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

――いや、それよりは、姉川より凱旋のこと、きょうは曠れの祝い、奥で盛宴を張ろう。休息の上、後刻、うち寛いでお互いに」

「なかなか」

信長は、手を振って、

「まだ戦いの後、将士に犒いのことばもかけて遣っておりませぬ。信長ひとり、大宴の贅に飽いては、何やら心がすまぬ心地――おあずけしておきましょう。再度、出仕の折に」

と、辞して退った。

宿所に帰ると、明智光秀が、

「大坂本願寺の門跡、顕如上人の使いらしき僧が、二条のお館を去って、何やらあわただしゅう立ち帰って行きました。――先頃から、僧徒と将軍家との往来に、怪訝しいものを感じまするが」

と、警備日誌をさし出した。

光秀は、藤吉郎の木下隊と交代して、その後、洛中守備軍として、京都に止まっていたので、室町将軍の目付役ともなって、そこの人出入りや市中の出来事など、つぶさに書きとめておいたのであった。

信長は、一覧して、

「大儀」

と、だけいった。

救い難い公方――と、思ってか苦々しげであったが、むしろ、その義昭が、従順であるよりは、幸いのようにも思った。

夜は、朝山日乗、島田弥右衛門など、禁裡の造営に当っている奉行たちを呼びよせ、その竣工の模様を聞きとって、