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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
なぜといえば、死生の間を通らずには、一箇の人としての成長もなく、戦場に学ばずしては、武門の子の教学もなかったからである。
ここに見る羽柴家子飼の者にしても、かつて、長浜の小姓部屋時代には、どれもこれも、青洟を垂らしかねない芋の子、山の子揃いだったのが、それが、どうして? と疑われるほど、いつのまにか各※(二の字点、1-2-22)、一かどの人品と武者振を備え、天下大惑の乱れを救うものわれなり――となす秀吉の左右にあって、大事小事、如何なる用にも事欠かぬだけの教養もみな持っていた。
それは決して、平日机坐の学問から受けたものではない。
多年、戦陣また戦陣で、主人の秀吉自身からして、勉強らしい勉強を書物に就いてする暇などなかった。兵書、国学、道義の書など、折にふれて手に取っても、それは悉く戦陣の燈下か、敵前の小閑だった。彼の小姓部屋の輩が、洟たれ時代から今日へ来た教学の過程もまた、同じものだったというてよい。
しかも秀吉始め下手ながら、国風の和歌も詠まんとなれば詠みもするし、筆書諸道、人なみはみな嗜んでいる。思うに、彼らの学問は、机というものを知らず、ただ、生死の道の生命を手鑑とし、人間世態の現実を訓と省み、天地自然を師となして体得されたものである。