轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

童女抄

夜はすでに四更に近かった。歓宴ならぬ歓も尽き、武者たちは早や具足の革紐を締め直し、打物把って、持場持場の最後の死所へ散り始めた。

勝家夫妻と、一門数輩は、相携えて、本丸の奥へ移った。

お市の方は、小机をよせて、辞世の墨をすった。

勝家も、歌ひとつ遺した。

帳裡の燭は、ほの暗く、楚王と虞氏の恨みも偲ばれた。時鳥は明け近きを告げていた。

童女抄

同じ夜――

夜は同じながら、人の夜はひとつでない。敗者、勝者、余りにも持つ明日はちがう。

秀吉は、夕刻、足羽山の本陣を、さらにすすめて、市街の一端、九頭龍川をうしろに、床几場をさだめ、

(夜の白み次第に、総がかりのこと――)

と、万端の令をすませて、心しずかに、明くるを待っていた。

市街もわりに平穏である。

二、三箇所に火災は起ったが、これも兵燹ではなく、狼狽した市民の過失火とわかっており、むしろこの大きな篝をもって、城兵の奇襲を監視する便となすように、終夜、燃えるに委せてあった。

宵に、秀吉から堀秀政へ渡されていた軍令は、すぐ五、六十通複写されて、

「陣々に、掲示するように」

と、各番手の部将へ交付されていた。

その箇条は次の通りである。