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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
中入り
……敵の岩崎、大岩の二砦はお味方の陣を隔たること最も遠い地点にあり、敵にとっては中核の堅塁かの如き観がありますなれど、それだけに、実はこの二塁の構築が他のどこよりも手軽く粗末にできておる。加うるにそこの守将も将士も、よもこの陣地へ敵の襲撃はあるまじとその位置に恃んで、守備に怠るの風も相見えまする。――今、電撃の不意をもって衝くならばここです。しかもひとたび敵のその中核部を突き崩せば、他の諸砦の如きは何程のものでもありませぬ」
中入り
「なるほど。――さすがはさすがは」
勝家は感悦をくり返した。そして彼の献策にも一応の頷きを与えた。それに附随して玄蕃允も、
「将監の達見は、たしかに敵の虚を衝いたものじゃ。筑前に泡吹かすは、その一策を措いてはあるまい」
と、これは率直に賛同し、口を極めて将監の才略を賞めた。
将監がこう持てたのは初めてだ。過日来、多少、怏々と楽しまぬ色のあった彼も、俄かに気色を持ち直して、
「まず、これを御覧ぜられい」
と、携えて来た戦図を拡げた。――それには、堂木、神明の二砦のほか、余吾ノ湖の東方に隔っている岩崎山、大岩山の砦、またすぐ南方の賤ヶ嶽から田上山などの幾塁や、北国街道に沿う一聯の陣地線と、所在兵力にいたるまで、掌を指すようであり、勿論、附近一帯の地勢、湖沼、山野、間道なども詳密に写され