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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
すでに七千のうち、半数以上の脱走者を出し、残る者も足が地についていないのである。加うるに彼らはすでに自己の総帥にたいする信頼を失っていた。ひとたび下からの畏敬なき馬上におかれては、鬼柴田の号令といえ、ついにうつろな空声に帰せざるを得ない。
「ああ。勝家も終りよ」
打っても響きのない士気をながめて、今はいかぬと、彼も覚った。しかし、彼自身の猛気は反対に彼に最後の死にもの狂いをちかわせた。夜は白々と明け、疎陣、人馬の影もまばらだったが――。
狐塚の地と、指呼のあいだに対峙していた羽柴軍の第一陣地――堀秀政の東野山の兵も、今朝になって、ようやく、動くところあらんとしていた。
勝家の主力が、この方面へ出たのも、要するに、その優勢な敵第一軍の牽制にあったのだから、勝家としては、その目的は達していたといってよい。
しかし、堀秀政ともある者が、この要地に、大兵を擁しながら、甘んじて、その陣地に釘付けにされていたのは、秀吉側から見れば、甚だ遺憾なりともいえよう。
一説には、こういうことも伝えられている。
当初、秀政は、直ちに積極的な攻撃を計ったが、その臣堀七郎兵衛なる者が、