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こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
それなら欲しいものをたずねると、何や四十おなごがおかずの才覚もできへんのかと怒る。カヤノはそれを心得て、作太郎の好みのものを二三種こしらえ、まず一つを出す。それが魚であれば肉がほしかったというに決っていた。
「あ、そう、肉やったらちゃんとできとんやで」と、カヤノがそれを出してくると、作太郎は、しもたっ、と舌打ちをしながら食べる。そんなこともしまいには効かなくなって、へっ、うちの嫁はん景気えいことやんのやな、育ちがえいさかいようけ銭でも持ってきたんやろ、といやみをいう。実枝は四年間そこで世話になっている間に自分の本当の名を呼ばれた記憶がほとんどない。いつでもおたやんおたやんと呼ばれていた。店の者までがそれを真似るのを聞きかねて、カヤノがそれだけはやめてくれというと作太郎はよけい図にのって、
「お多福にちがいないやないか、分らんなら鏡見せたろか。ほんまにお前らの親はよう九人もおたやんばっかり生み揃えたな、よっぽど好きなんやな」
そしてそれからは今までよりも大きな声でおたやんと呼んだ。実枝が重吉の看病に呼び戻された時にクニ子にその話をすると、クニ子はむっとして、