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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

吉川英治『治郎吉格子 名作短編集(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:治郎吉格子、増長天王、醤油仏、八寒道中、野槌の百、銀河まつり、無宿人国記、雲霧閻魔帳。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 页

青空文庫

だが――また始まる! とそこへワラワラ寄ってきた砂利場の軽子は、皆んな一度は伝公にせしめられている組なので、三公の梅忠もどきの啖呵に手を叩いて気勢を添える。

伝公は、口を結んで、砂利山にぬッと立った。

「よし、賭けてやる」

「てめえも見せろ、正金で十両、あるか」

「ふん……」

煙草入れから十両出して、

「粉だけまけてやらあ。さ、支度をして来い」

「二升八合だぞ」

退ッぴき出来ないようにしておいて、丑がそこで、また約束より三合割を掛けた。

「いいとも」

伝公は怯まなかった。

立派だ、侍が果し合をするようだ――と左次郎は感心して、かれの堂々とした体躯にみとれていた。

すぐ酒屋へ飛んで行った者がある。升を探して来る奴がある。知らない者をワザワザ呼び立てる者がある。そんな騒ぎに、小普請小屋の役人や、川番所の番太郎まで、何事かと、この人輪へ駈け集まる。

「おれが、よしというまで、注いじゃいけねえぞ」

伝公は少し居場所をかえて、大谷石を二ツ重ねた上へ、悠々と腰を下ろした。

そしてしばらく大川を睨んでいた。

さすがに、この間は、弥次を言う者もなく、初めのうちは、

「無智にも程があったもの、あんな馬鹿な真似をして、何が面白いのか」