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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「それじゃア奥様、お上げしますので」
「あたりまえだよ、何をマゴマゴ! ……まだマゴマゴしているのかい!」
「ヒーッ」
とお梅はころがって走った。
「さあ大変、お化粧がしてない! ……お化粧をして、お召しかえをして、……それにしてもマアマア民弥様が……夢のようだよ、マアマアマア……お化粧をして、お召しかえをして、綺麗になって出て行って……それから、ホッホッホッ……よういらせられました! ……こう云ってお化粧をして……アレマア妾どうかしているよ! ホッホッホッ!」
お化粧部屋をさして、梶子は一散にころがり込んだ。
民弥は座敷に坐っていた。
周文の大幅を床にかけ、宗丹筆の六曲屏風を、部屋の一方へ立てまわした、随分贅沢で華やかな部屋を、押し据えた眼で見廻しながら、民弥は心をイライラさせていた。
(梶子殿と逢ってかけ合って、人形を当方へ取り返さなければおかぬ!)
で緊張しているのであった。
ずいぶん長く待たせた後で、梶子は部屋へはいって来た。
一時も早く逢いたいのであったが、お化粧とお召しかえに時を費やし、そう長く待たせたのであった。
長くお化粧をしただけに、梶子の美しさは見事なもので、見とれてウットリするほどであった。