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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「萩丸殿ご機嫌はいかが?」
にこやかに民弥はこう云いながら、萩丸の前へ端座した。
「…………」
萩丸は返辞をしなかった。
いずれ宥免状を書けなどと云って、強要するに相違ないが、俺は断じて宥免状は書かない! こう決心をしているからで、それで素ッ気なく沈黙し、横を向いてしまったのであった。
そういう萩丸の態度によって、民弥は萩丸の決心を知った。
(これは説いても仕方がないな)
こう思わざるを得なかった。
(気の毒だが断行しなければなるまい)
「萩丸殿」
とそこで云った。
「我々同志今日まで、入りかわり立ちかわりあなた様に対し、あなた様の祖父君頼宣卿のために、捕えられました我々同志への、宥免状お認めくださるよう、懇願いたしましてござります。が、あなた様におかれましては、頑としてご承引くだされず、今日に及びましてござります。……今日私参りましたも……」
ここで民弥は幽かに笑い、萩丸の顔を改めて凝視し、
「その宥免状の認め方を、お願いいたそうためでござった」
ここで民弥は苦く笑った。
「が、断念いたしましてござる。……あなた様のご様子拝見いたしましたところ、依然として断乎としてご承引ない! ということを知りましたからで……ついては……」