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げんだいゆいぶつろんこうわ
現代唯物論講話
戸坂 潤
「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页
がまず今の場合の代表的な物質概念だと云うことが出来よう。
だが、物質に就いての哲学的概念は無論そのような俗語や又は啓蒙的な通り言葉に、完全に制約されて了うことは許されない。自然科学的範疇としての物質であっても、化学の発達や近代物理学の発達によって――原子構造論・量子力学・原子核物理学・等々――、すでに幾世紀か昔のものとは甚だしく異ったものとなっているのは当然だが、そうした「進歩」した物理学的物質の概念によってさえ、哲学的な物質概念は制約されることが出来ない。否寧ろ、物理学のそういう進歩は、物理学的物質の概念が、哲学的範疇としての物質から少なくとも如何に異るかを実証的に示しているに他ならない。
哲学的物質とはでは何か。それは他でもない、全く存在の概念なのである。この場合人々は存在するもの・存在物乃至存在者・を考えることを後回しにして、まず第一歩として、存在すること・「存在する」・という概念を念頭に置かねばならぬ。無論後に見るように、或るものは存在者で、それがなければ、存在するということの概念も一応の具体的な意味に達しないのだが、今の問題はさし当りそういう存在するものに関する理論――存在論其の他――にあるのではなくて、そのためにこそ、それより先に、存在という範疇に関する理論――論理学――が問題なのである。