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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

価値が天下って来るなら両者は全く無関係であるかも知れない。否無関係であらざるを得ない。処が吾々によればどの価値も云わば土壌から生えて来た樹の分枝なのである。湖の水面に頭を現わした樹の枝はバラバラに独立しているが、併し誰も水面だけを見てどの枝も独立だとは結論しない。枝は夫々別であるにも拘らず、共通の幹か根を持っている。それは水面の下に見えない下部構造を有っている。イデオロギーの諸価値は斉しくこの見えない下部構造から発生して来た枝であった。下部構造はなる程水面からは見えない。だから夫は価値ではないものと考えられる。処が価値はこの価値で無いものから生じて来たのである。もし「価値の体系」を求めるならば、吾々は価値の枝を天上の方へ向かって攀じ上る代りに、水面下まで伝って降りて見なければならない。そこに諸価値の叢源がある。価値はここから、この下層建築としての物質的な社会機構の、所産・反映・として転化・発生・して来るのだ。だから論理的価値も美的価値も元来この物質的なるものによって体系づけられているのである。ただその所産のされ方・反映の仕方・転化発生の条件・の相違が、この体系に於ける両者の位置関係として、二つの価値の相違を与えるのである。