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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

三 幾何学的空間・物理的空間

三 幾何学的空間・物理的空間

空間の問題を心理学に関係して出発させた吾々は、今度は、幾何学に就いて空間の問題を見よう。

幾何学は空間に関する数学である、そう普通の人は常識的に信じているだろう。併しこの言葉は実は、非常に複雑な内容を持っているのである。今日多くの数学者達は、幾何学を却って、所謂空間と考えられるものから全く独立なものと考える。点と云い線と云い面と云っても、無論夫は吾々が経験出来る現実の物体を借りては指摘出来ない、夫は少なくとも物体の或る理想状態――部分のない位置とか(点)幅のない長さ(線)とか――に過ぎない(ユークリッド※(始め二重括弧、1-2-54)前三―四世紀※(終わり二重括弧、1-2-55)はそう定義した)。併し近代の幾何学に於ては、それだけではなく、之等の名辞はもはや、こういう経験的乃至直観的な、又言語的な意味内容をさえ全く脱却して了っていると見做される。これは、それ自身定義され得ない単なる或るもの、を云い表わす諸名辞に過ぎないのであって、夫々の名辞はただ他のものとの一定連関の下で初めて他の名辞から消極的に区別されるに過ぎない。